幼い頃にエロ漫画を拾って隠し持っていたら母ちゃんに見つかり人生終わったと思った話とは関係ない話
本の購入がきまぐれの私は、図書館にフラッと行きタイトルだけで借りることが多い。なので残念ながらヒット作が少ない。半分読んで挫折して返す本も多々ある。もっと吟味して借りたらいいのだよとアドバイスをくれる友もいるが、タイトルで選んだ本がヒットした時の感動が好きなのだ。だから、しばらくはこの借り方は続くと思う。そんな最近ヒットした本のお話。
【きわきわ 藤本由香里著 亜紀書房】
”「痛み」をめぐる物語”という言葉から何を連想するのだろう?
このサブタイトルと表紙のデザインが気に入って迷わず借りた。たまに、こんな問題作のようなものを図書館で見つけると言論や表現の自由な国でよかったと思い知らされる。情報操作されず、選択できるということに責任をもって取捨選択をしていきたい。
自傷・リストカット・スプリットタンや刺青などのボディ・モディフィケーション、美容整形、美醜の問題、顔の傷痕、婚外の性愛、セックスワーカー、障碍者の性・・・・・・など、いわゆるコントラバーシャルな(=議論を呼ぶ)類の、だからこそ人々が話題にするのを避ける「きわきわ」な問題だけを追いかけて綴った「ゼロ年代(+α)の日本」論である。
あとがきからの引用だが、結構ヘビーな内容である。それに関連した漫画、映画、小説、舞台などの数多くを題材にしている内容も特徴だ。Ⅱ章で触れる「徴(しるし)のある顔」では、私自身の痛みと重なる「口唇口蓋裂(いわゆる「みつくち」)」についても出てくる。もうすでにこの言葉さえ酷すぎてウンザリするのだけれど、この5文字を見ただけで痛みが走った。 それぞれのかかえる痛みからは、生きるための術であったり、人となりの関係性が存在する。
<第一話 徴のある顔 Face12 微笑みの効用 からの引用>
「たとえば、顔に『障害』のある人がバスに乗った時、周囲の人はどうしてもその人を見つめてしまいます。そのとき周囲に向かって微笑む。そうすれば人は安心して好奇の視線を注がなくなるのです」
22年間カウンセリングをされてきた方のアドバイスは的確だ。好奇の視線を感じるのが嫌で嫌で、つねに隠そうとして下を向く癖がついたり、鼻を隠そうと手を持っていくようにしていたがその対応はより視線をあつめることになって苦しかった。この生まれもった鼻で、どれだけ痛みを感じてきたかわからない。読み進めてまた痛みや暗闇がやってきそうなのに、他にどんな痛みがあるのか知りたくて本のページをめくった。
【気になる目次】
Ⅰ 表面の傷・「痛み」の力 コミックの中の自傷
Ⅱ
- 第一話 徴のある顔
- 第二話 他者になりかわりたい
- 第三話 婚外の恋
- 第四話 恋と日常
- 第五話 社長になるか、社長夫人になるか
- 第六話 風俗という「お仕事」
- 第七話 セックスワーカーはヒーラーでもある
- 第八話 せまいせまい私の場所
- 第九話 一瞬だけの永遠
性に関して幼い頃から敏感だった私には第六話と七話が一番印象深い。多種多様な性について書かれているなかでプロ意識をもって仕事をしている人がいて、求めるものを探していく人がいて。でも求めるものと与えるものとのギャップがあったりの葛藤や現実。「男は、いったい、風俗に何を買いにくるのか?」という著者の問いに「たいていの男は、自分の快楽だけのためには、あんなに高い金は払わない」と口をそろえて言う風俗嬢の生の声は痛々しい。
ふと、何故風俗嬢の「嬢」はお嬢様の「嬢」なんだろう?風俗女じゃダメなのか?と思ったので調べてみたら単純なことだったw
知らないことや、自分が理解できないことには拒否感がつのる。知らないから怖いという感情は初めてイクという感覚を感じた時と似ている。
残念ながら、ヒットと言い放ったこの本だけれど第八話と九話だけは、文字の羅列のようにしか感じなかったので最後まで読んでとはいえない。コントラバーシャルなことも、オープンになってきた現代だが肯定否定の話ではなく「そこにある事実」があること知れる本である。